世界中の都市を訪れたとき、私は地元食材が豊富なローカル市場を訪れることが多くあります。その中でもタイのバンコク訪問で立ち寄ったのが、クローントゥーイ市場という、バンコク最大規模かつ常設のローカル市場でした。
(今回「ですます調」で書いてます)
この市場はまさに東南アジアの食材市場というイメージそのもの。地元の多種多様な食材が一堂に会している光景は、そのままタイ・バンコク食文化のエネルギーを感じることができました。
市場内は、広大な敷地に野菜、果物、魚介類、動物の食肉、調味料など、食材の種類ごとにエリアが分かれています。日本人には馴染みのない食材も多く、グロテスクな肉片がコミカルに乱雑に陳列されているところも散見されました。血と肉が踊る生々しい環境には少し危険な気配が漂っていて、それは日本の市場とは異なる、タイ王国が持つ食文化の懐の深さが表れています。
私が興味津々なのは、食材の種類、陳列方法そして販売価格などはもちろんのこと、この市場に訪れる地元住民、専門業者、料理人そして屋台店主など、それら人々の表情やしぐさ、会話を観察することです。私もお店の店員さんと簡単な挨拶や会話をなんとか試みるのですが、その過程で街のカルチャーや独自のルールのようなものを知らず知らずのうちに学んでいるような気がするのです。
クローントゥーイ市場、バンコク、タイ。
1 Kasem Rat Rd, Khlong Toei, Bangkok 10110 Thai
この市場のような生々しくて混沌とした場所には、人間本来が持つ欲求が表面化して縦横無尽に渦巻いているようでした。それは私にとってはクリエイティブな思考を喚起している場所であるかのような感覚もありました。この場所と空間には個々の生存欲求が錯綜しているのです。それはアナーキーなクリエイティビティが溢れているような気がしたのです。
ちなみに、ここを訪れる外国人はほとんど見られませんでした。余計なことかもしれませんが、一つアドバイスです。こういったローカルな食材市場へ来るときは、もしあなたがヘビーな二日酔いの時だったら足を運ばない方が良いということです。市場には多種多様な生き物の匂いが混ざり合っています(私もかなりキツかった)。そして、それらが頭上に広がる東南アジアの生暖かい空気を遮断しながら大きい透明なドームのようになり、クローントゥーイ市場全体をすっぽりと覆っているような感じがあるのですが、そこへ熱帯特有の太陽光線が市場全体を蒸し揚げて来るので、あらゆる匂いを増強させて、あなたの心と身体をジワジワと苦しめるのです。二日酔いのあなたは耐え切れず、遂には猛烈な逆流現象を引き起こす可能性が高いでしょう。
旅においては現代的で洗練された美術館、図書館、クラブ、ルーフトップバー、レストランなどを訪れることももちろん良いですが、旅慣れた人にとってはこういった極めてローカルで混沌とした場所をみて、その国や都市が持つ両側面を楽しんでみることも、旅の醍醐味の一つかもしれませんね。
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