
CASE STUDY
老舗飲食店の買収後の再成長へ〜「既存事業の立て直し」
ホスピタリティ系サービスや人材マネジメントの方法論見直し、組織の改革
~伝統と革新の再融合:人材活性化による多店舗展開戦略へ向けて~
不動産業を本業とする中堅企業が、多角化戦略の一環として老舗鉄板焼き店を買収し、新たな成長フェーズに挑もうとしていました。当社は、この伝統ある飲食店を再び市場に適合させ、多店舗展開へと導くために、総合的な事業開発および組織改革を支援しました。
事業の立て直しでの主な着手事項
▶︎コンセプトとハード面・ソフト面の整合性に関する再評価
老舗としての歴史的価値を再定義すると同時に、現代の顧客体験に適合するよう、サービス・オペレーションと店舗空間の両面を見直しました。
▶︎商品リニューアル
既存メニューの強みを活かしながら、新しい顧客層を取り込む看板商品の開発を推進。収益性と回転率を両立するメニュー構成へと刷新しました。
▶︎食材と業者、メニューの見直し
調達ルートの精査と仕入れ先の再選定により、コスト最適化と品質向上を実現。持続的な運営に耐えうるメニュー体系を再構築しました。
▶︎内装・厨房設備・什器備品リニューアル
厨房動線を改善し最新設備を導入。さらに客席環境を改修し什器を一新することで、効率性とブランド体験を強化しました。
▶︎サービスの見直し
接客マニュアルを刷新し、スタッフ教育を徹底。標準化と柔軟な個別対応を両立させ、顧客体験を高めました。
▶︎ブランド・ロゴ他の変更またはデザインの刷新
ロゴやビジュアルを再設計し、広告や店舗デザインを統一。老舗の信頼感と革新性を兼ね備えたブランドイメージを確立しました。
▶︎在庫管理の方法の見直し
属人的な管理を脱し、システムによる可視化・定量管理を導入。廃棄ロス削減とコスト圧縮を実現しました。
▶︎スタッフの業務役割の再定義
厨房・ホール双方の役割を整理し、効率的なシフト管理と技能活用を可能に。新規出店に耐えうる柔軟な人材配置を構築しました。
▶︎評価システム更新・新しい組織体制の導入(※社労士と協業)
職能等級制度や報酬体系、昇進基準、技能認定制度、表彰制度などを整備。公平性と透明性を重視した人事制度により、モチベーション向上と技能継承を両立させました。
▶︎DXによる業務効率化
在庫・勤怠・予約管理をデジタル化し、データに基づく改善サイクルを構築。業務負荷を軽減し、多店舗展開を支える運営基盤を整えました。
▶︎その他
事業再生専門チームと協業し、キャッシュフロー整合性や投資回収計画を策定。制度改革と財務戦略を一体化させ、持続可能な成長を下支えしました。
***
プロジェクトを進める中で、最大の課題はファイナンスやリノベーションではなく、長年の歴史の中で硬直化した組織体制の刷新でした。特に、キッチン・ホールスタッフの勤務体系、技能評価、モチベーション管理、人材育成に大きな改革が必要とされました。
具体的な課題は以下の通りです:
-
就業規則が現代の働き方や価値観と合致していない
-
技能評価基準が不明確
-
新規出店に向けた採用戦略と技術継承の仕組みが不十分
これらに対し、当社は段階的に改革を実施しました。
-
第一段階:幹部スタッフと調理技能スタッフの能力評価を行い、新たな組織体制を仮設計。ホスピタリティ産業に適合する人事制度・評価制度を再設計しました。
-
第二段階:以下8つの制度を詳細に設計し、運用マニュアルを整備しました。
-
職能等級制度
-
報酬体系の刷新
-
昇進昇格基準の明確化
-
公平な懲罰規定の整備
-
技能認定制度の確立
-
資格取得支援制度
-
従業員表彰制度
-
独立支援プログラム
-
これらの新制度は3ヶ月間の仮運用を経て、さらに3ヶ月のチューニング期間を設け、現場の声を反映して完成しました。
この事例から得られた示唆は、ホスピタリティ産業の持続的成長には、制度設計を超えた包括的な改革が不可欠であるということです。
-
公平な評価制度による成長意欲の醸成
-
世代を超えた技能継承の仕組み
-
デジタル化時代に適応した柔軟な働き方
-
伝統と現代的企業文化の調和
***
テクノロジーの進化により働き方や顧客サービスが大きく変わる中で、伝統を尊重しながらも時代に即した組織運営が求められています。当社は、人材活性化・制度改革・DX導入・財務健全性の確保を一体的に進めることで、こうした複雑な課題に対しても戦略から実行・検証まで一貫した支援を,ご要望に応じて提供しています。

